第9回「森田雄一-前編-」



 

毎度どうも。私パノラマファミリーという名義で音楽をつくったりラップしたりしているゴメスと申します。この妙なコラムもやっと9回目。10回目までいったらこのコラムのテーマを変えます。あしからず。しかしもう9回まできましたか。早いですね。野球で言ったら最終回です。まぁ今回で終わる勢いであとは延長戦って感じでしょうか。

しかしあれですね。電車内でのマナー標語でよく「ヘッドフォンの音漏れ」とか「ちゃんと詰めてみんなで座りましょう」というのとか、色々駅や電車内にありますが。「なぜこれは電車内迷惑行為に入らないの?」というのがあります。そうです、これです。「不潔な格好では乗らないでくれ」というマナー標語です。みんなで座るシートが水拭きしずらそうな素材なのだから、絶対に清潔にした方が良いと思うんです。ヘッドフォンの音漏れなんて「おっさんのくしゃみ」よりは不快じゃないし、おっさんのポマードの頭の匂いに比べたら、もはや好きにやってくれ!って感じです。

あと、マナーとルールをはき違えて、ガラガラの車内だし2駅で降りるしと思って優先席にちょっと座ると、「ちっ」とこれ見よがしに舌打ちしてくるジジイも嫌ですね。逆に優先席ガラガラで、普通の座席は込んでいるのに、お年寄りが普通のシート側のつり革握りに来たりすると最悪です。この場合優先席は空いているのに、普通の座席にお年寄りに席を譲らなければいけません。「これぐらいで文句言うなよ、小さいやつだな」というなかれ! もし、寝不足続きで、さらに仕事でストレスがパンパンにたまって、「今日は絶対に電車で寝て帰りたいから一駅戻って、”○○駅発”の電車から乗ろう。」なんて思っていた矢先にこんなお年寄りが自分の目の前のつり革をつかんでしまったら……。もう、はらわた煮えくりかえるわ、疲れは溜まるわで最悪の負のスパイラルに巻き込まれます。こういうことを女の子に話すと「器が小さい」の一言ですまされることがありますが、そんなとき「お前は想像力がないんか!? 結局ヴィトンとかコーチとか持ってたいだけなのかコラぁ!!!!」と心で思っていたりします。僕は。

小さい話なんですが、こういう小さいストレスが結果世の中を悪い方向に持って行ってしまうわけです。1台の高速の料金所トラブルが、結果大渋滞を起こしてしまうのと似ています。そして、地震後のゴタゴタもこれに似ているような気がします。あ、、、、、このコラム、こういう日常の怒りを綴るテーマじゃなかった。。。なんか空気読まずにスンマセン。ま、たわごとなんで気にせずに!

ということで第9回目参ります!

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適当に思い付いた名前を見て、オレが勝手にどんな人生を送ってきたか、プロファイリング、つまり分析するコラム、「Don’t Stop In The Name Of Love 」スタート。

第9回目の名前は「森田雄一」です。
(※あくまで仮想の名前なので偶然の一致は悪しからず。)

ではスタート!

「はい出席とるぞー」薄っぺらい教師が教室に入るなりいつものように言った。「阿部~」「はい!」「井岡!」「は~い」「…鈴木~」「はーい」……いつものがくるぞ。と雄一はイライラしながら軽く身構えていた。「タモリー」「…は…い…」教室からはヒソヒソ声が聞こえる。それは雄一には完全に聞き取ることはできないが「モリちゃんキレてんじゃね?」的な声が聞こえた気がした。

「タモリ」。そう、あのタモリ。雄一は小学校に入るなりすぐタモリというあだ名で呼ばれた。きっかけは担任の政子先生が「タモリの本名は森田だ」と最初のホームルームでなにげなく言ったのがきっかけだったと思う。もちろん雄一はタモリを知ってたし、芸風のことはその当時は理解していなかったが割と好きだったのだ。

「イグアナ」

それが最初にタモリを嫌いになった理由のほとんど全部だった。タモリが昔やっていたギャグらしい。
先生がイグアナのマネとかやってて面白かったと言った途端、周りの友人が茶化した。それが雄一には気に入らなかった。ひょっとしたらこのままイジメになるかも知れないという不安がよぎったのかもしれない。とにかく茶化されて気に入らなかったので、その授業が終わってすぐの休み時間に、茶化した友人の胸ぐらをつかんで、怒声をあげた。周りもざわついて、先生にそのケンカは止められた。それからほどなく友人とは和解したものの、タモリのことを話したり、ミュージックステーション、いいとも増刊号の話は誰もしなくなった。正確にはしなくなったのではなく、雄一には聞こえなくなった。

部活の練習は18:30きっかりに終わる。県大会前だしもっと練習したいのだが、先日のPTAの会議でそう決まったらしい。雄一の中学では生徒は3年の大会が終わるまで部活動を必ずやらなければならないことになっている。だからやりたくてやっている奴と、嫌々ながら部活に参加しているものに分かれる。多分後者の親がPTA会議で18:30までの案を出したのだろう。教師の喜びそうな受験勉強のことなんかと関連づけたりしたのだろうか。

家に着くのは20:00頃、帰ると家族がミュージックステーションをのんびり観ている。流行りの音楽にも少し興味があるけど、タモリが出ていると思うと見ようとは思わない。キッチンで一人で夕食を済ませ、流しにもっていく。2階にある姉と雄一の部屋へ向かう。部屋は1つの部屋をアコーディオンカーテンで仕切り、2つにしてある。奥が姉の部屋で、入り口側が雄一の部屋だ。低音をイコライジングするボタンが付いたラジカセにヘッドフォンを挿して、ラジオから録音した音楽を聴く。これが雄一のいつもの金曜日の夜の過ごし方だ。

音楽は良い。聴いている間だけは嫌なことは全部忘れる。
宇宙っていうか自分がミクロになるというか、そんな感じがする。

幼いときはキン肉マンやアラレちゃんのテーマ曲が好きだったが、次第にTVから聞こえるCM音楽、流行歌などに興味を持ち、ドリカムなんか好んで聴いていた。中学に上がってからは、ミュージックステーションを観なくなったのもあって、学校のみんなとは音楽の趣味が大きく違っていた。でも、羨ましいとは微塵も思わないし、クラスのみんなの音楽は子どもっぽく感じた。

毎日、ほとんど浴びるように色々とラジオを聴いている内に、なぜか興味を持った音楽がある。
JAZZだ。
最初は退屈に感じたのだが、次第にあの特徴的な音色が癖になった。
何の楽器かは分からないが管楽器であることは間違いなかった。
あのクレッシェンドしてはデクレッシェンドをくり返すあの音……。
ビバップよりは、ロングトーン。静寂のようで烈火のごとくでもある。
落ち着くようで恐怖も感じる。
雄一にはCDを買うお金はほとんどないから、新聞でラジオのラテ欄をくまなくチェックし、JAZZの文字がある番組を片っ端からエアチェック、つまり録音するようになった。
録音したJAZZをくりかえし聴くうちに好きな音色がはっきりとしたのだ。しかし、この音色はなんだろう?
なんとなく管楽器だとはわかるけど、トロンボーンじゃないしサックスほどブリブリ言わないし、トランペットほど明るくないし、ん-……、あ! 雄一は隣町にJAZZ 喫茶ってのが確かあったことを思い出した。
明日部活の帰りに寄ってみようかな。そう思ってまたヘッドフォンのボリュームを少し下げ、ゴロンと安物のラグマットに横になった。

……第10回へつづく。